お花屋さんは花言葉に詳しいの?
「この花の花言葉って何ですか?」
お花屋さんをしていた時、時々そういう質問を受けました。
花言葉まできちんと調べてお答えするのが、丁寧なお花屋さんだったかもしれません。
でも、調べる気も覚える気もないので、私の返事はいつもこうでした。
「ごめんなさい。知らないんです。」
お花屋さんはお花の事を色々知っている。⇒花言葉も当然知ってる。と思われていた様です。
私の答えを聞くと、大抵が、拍子抜けしたように「あ、そうなんや。あんまり関係ないのかな?」と続きました。
私は、お花を好きな人って、花言葉は気にしないんじゃないかな?と思っています。
お花屋さんをしていた時のよく来てくださったお客様、私自身の生け花の先生と先輩や仲間、お花屋さん時代の同僚、知っているお花屋さん。
総人口からしたら本当にわずかなので、統計とは程遠いですが、私の知る限りお花の好きな人が花言葉を気にしてお花を選んでいる姿を見た事がありません。
花言葉にまつわる出来事
同じお花であっても、色によっても花言葉が違ったり、1つのお花がいくつかの花言葉を持っていたり、更に1つのお花が相反する意味の花言葉をもっていたり、花言葉はとても複雑です。
そして、誰もが美しいなと思う人気のあるお花が必ずしも素敵な花言葉を持っているとも限りません。
その反対に、素敵な花言葉を持つお花が、贈り物でよく使うお花であるとは限らないのです。
お花屋さんをしていた時に、こんな出来事がありました。
若い男性のお客様がやって来られて、
「アゲラタムだけで花束を作ってください。」と注文されました。
アゲラタム。
どんなお花かすぐにピンっとくる方は、少ないんじゃないでしょうか?
私もお花屋さんになるまで知りませんでした。
一番よく見かけるアゲラタムのお花の色は青みがかった紫色で、アザミをもっともっと小さくしトゲトゲを優しくしたようなお花です、と言ってもなかなかピン!っとはこないでしょう。
ガーデニングが好きな方にはポピュラーなお花で、花壇やプランターで育てられています。
花丈の長いものは切り花でも流通しているので、アレンジメントを習われている方には馴染みがあるお花かもしれません。
ポンポンの様なまあるい形、ふさふさした独特のお花の質感、涼しげな青紫色。
他の花にはない特徴を持つ、このアゲラタムというお花は、アレンジメントの中でいいアクセントになり、他のどのような色の花にもしっくりと馴染むのお花なので、私は大好きです。
主に夏を中心に流通するお花なので、先ほどの男性のお客様が来られた時にはお店にありませんでした。
その旨をお伝えしたのですが、「どうしてもアゲラタムの花束を手に入れたい」との事。
訳を聞くと、花言葉、でした。
アゲラタムには、幸せになる、という花言葉があるそうです。
その花言葉をある女性に贈りたい、という事でした。
でももし私がその女性だったら、アゲラタムの大きな花束を見たら、チョットびっくりして、そして、「何でこのお花?」と思うでしょう。
その後に花言葉を聞いて、ようやく意味が分かる事でしょう。
もちろん、素敵な花言葉を送ってくれたことは嬉しいですが、どうしても「なぜ?」が残ってしまう様に思われてなりません。
選んだお花が偶然にも素敵な花言葉を持っていたら素敵な事です。
でも花言葉が先行し、花言葉だけに執着するのはチョット残念な気がします。
それぞれの得意分野
アゲラタムは、アレンジメントのアクセントに使ったり、ナチュラルで涼しげなお花をテーブルの上にちょこんと飾りたい、という時にその魅力を最大限に発します。
お料理にもメインディッシュがあり、前菜やスープ、そしてデザートと、それぞれの役割があります。
お花にも、メインで大きく飾るのに向くお花、メインを引き立てるサブのお花、一輪挿しなどでひっそりと主張するのが得意なお花、とそれぞれの得意分野があります。
アゲラタムだけで、女性に贈る花束、という役割をするのは余り得意分野ではないと、私は思います。
『幸せになる』というメッセージを贈りたいのなら、私ならアゲラタムの花束を贈るより、女性に贈る花束を得意分野とするお花、例えばバラ、にメッセージカードを添えて贈る事を選択します。
その方がより自然に受け取ることが出来るように思います。
花言葉は人間が勝手に決めたもの。
お花に選択権はありません。
私の花選び
私の2歳になる娘は、お花が大好きです。
お花を見ると、「お花、キレイね。」と、必ず反応します。
それがたとえ、あぜ道に咲くタンポポでも、5本立ての豪華な胡蝶蘭でも、全く変わらない同じトーンで、「キレイね。」と。
キレイなお花を見てキレイだなと思う。
お花を愛でるというのはこういう事だと思っています。
どのお花も美しいです。
それぞれのお花の一番美しく輝くところを引き出していくのがお花屋さんの役割だと思って仕事をしていました。
それぞれのお花の得意分野を紹介し、いろいろなお花の魅力を紹介していくブログ。
なので、私のお花選びは花言葉を意識して選ぶという事はありません。