『生け花』というと、とても日本的なものだと思われるかもしれませんが、生け花で使用するお花は和風なお花ばかりではありません。
生け花の花材を選ぶ際にも、「和風なお花を選ぼう。」と特に意識して選ぶという事はありません。
ですから、生け花の作品の中に和風なお花と洋風なお花が混在することも決して珍しいことではありません。
今回のお花は、仕上がりはとっても和風なのですが、洋風なお花も組み合わされ、自然界では決して並ぶことのないお花同士が違和感なく隣り合うという1杯になりました。
お花の紹介
まず枝物は、木瓜(ボケ)です。
品種や地域にもよりますが、春の訪れと共に咲く、私の1番好きな花の咲く枝物です。
春に花の咲く枝物はたくさんあります。
咲く時期は少しずつ異なりますが、まず思い浮かぶのが桜、梅、桃。
木瓜(ボケ)のお花の様子を言葉で表すと、
桜のお花ほど咲きほこらず、
梅のお花ほど高貴な印象でもなく、
桃のお花ほど可愛らしい色合いではない。
木瓜(ボケ)のお花は、赤・ピンク・白の色がありますが、どれも落ち着いた温かみのある、愛らしい色合いです。
今回のお花の中では、和風な印象を持つお花です。
今回はその木瓜(ボケ)が2本。
メインのお花にアイリスが2本。
まだ完全に固いつぼみの状態でいろや形は分かりにくいですが、濃いめの紫のお花です。
アイリスとは、『日本を含めた東アジアや、ヨーロッパ南部が原産のアヤメ科の総称』だという事です。
しかし、飾ってあるアイリスは和風な印象を持つことが多いお花です。
サブのお花に白のスプレーマムが2本。
と、ここまでは和風な印象のお花です。
アクセントになるお花に、オンシジウム。
オブリザタムというオンシジウムの中でも非常に小さなお花を咲かせる品種です。
こちらが一般的なサイズのオンシジウムです。
お月見のお花の時に使用しましたものです。
オブリザタムは非常に小さなオンシジウムですので、黄色いカスミソウとも言われているそうです。(私も初めて知りましたが。)
原産地は、コスタリカ、パナマからコロンビア、ペルーだそうです。
上に挙げた木瓜、アイリス、スプレーマムとは自然界では隣り合う事はなさそうなお花ですね。
最後に葉物は、ドラセナ。
ゴッドセフィアナという品種です。
生け花で頻繁に使用する葉物です。
花器選び
今回は、木瓜(ボケ)の愛らしい赤を最大限に表現するために、白い花器に活けたいと思います。
そこで選んだのは、こちら。
オンシジウムのお花の説明のところでも紹介した『お月見のお花』を活けたときに使用した花器の色違いです。
底に剣山を入れて使用する、深型の水盤です。
お花の色が映えそうです。
お花を活ける
まず、枝物の木瓜(ボケ)を活けます。
今回は枝が2本入っていたのですが、1本はかなり太目で枝分かれもしている、もう1本は細い枝でした。
写真では分かりづらいのですが、太く枝分かれしている方の枝を、前方に向け傾斜をつけながら入れています。
そして、2本目の細い方の枝は、1本目と比較すると傾斜角度は付けずに後方に少しだけ倒して活けています。
メインの枝に強い傾斜角度を設けて活ける生け方です。
次にアイリスを活けます。
まだつぼみですが、大きく咲きそうな方を中央に、小さめの方をその後方に、両者ともあまり強い傾斜を付けずに活けます。
これは私の好みなのですが、アヤメ科の植物はあまり傾斜を付けずに、垂直方向に近く活けた方が美しいように思います。
(ただ、2本とも本当に垂直に入れてしまうと不自然ですので、
他のお花を見ながら調整します。)
続いてオブリザタムを活けます。
こちらは角度を付けて活けます。
黄色が入ると一気に華やかさが出ます。
コスタリカ、パナマ、コロンビア、ペルーという原産地からみると、全く和風なお花ではありませんが、違和感はありませんね。
オブリザタムのラインに合わせるようにドラセナを1本、もう1本は後方に入れ、こちらもオブリザタムの色を引き立たせます。
最後にスプレーマムを入れ、完成です。
スプレーマムもまだつぼみですので、綺麗に開くともっと白が強調されます。
まとめ
活けあがったお花を見て、主人は
「今回は和って感じがするお花やな。」という感想を持っていました。
全体には和風なお花なのに、色々な原産地のお花が違和感なく隣り合っています。
自然界では並ぶことのないお花同士が、こうして1つの花器の中で調和して1つの世界観を作っている。
今回のお花を活けて、
「お花の組み合わせは無限だなぁ。」という事を改めて感じました。
ところで、最近とても気温が低いので、お花がとてもよく持ちます。
先週活けた『2019年、1回目のお花』もまだ十分美しいです。
こちらは少しコンパクトにして2か所に活け替えました。
その様子はこちらをご覧ください。