寒くなってくると明らかにお花の日持ちが違います。
前回の配達から1週間が経過してもまだ十分に状態の良いお花がたくさんありますが、今日は定期配達のお花が来る日です。
お花の紹介
まず、メインのお花はオレンジのバラです。
今回は品種名は不明でしたが、ケニアからの輸入品です。
ケニアは世界的にもバラの生産に適している国で、農薬の使用を極力抑えた栽培が特徴だそうです。
サブのお花はスプレーストックです。
一般的にストックといえば、このような咲き方のものを指します。
先週の定期配達のお花に入っていたのは、こちらのストックです。
1本の茎が枝分かれせず直線的で、上の方にお花を付けているという形状のお花です。
それに対して、今回のストックはスプレー咲きです。
スプレー咲きとは、1本の茎から枝分かれして数輪のお花を咲かせているものを指します。
葉っぱがたくさんついているので写真では分かりづらいですが、 1本の茎が5つに枝分かれしてそれぞれにお花を付けているストックなのでスプレーストックと言います。
主なスプレー咲きのお花と言えば、スプレーバラや写真のスプレーカーネーション、スプレーマム(菊)などが挙げられます。
今回のポイントとなるお花は、バンダです。
ランの1種で、紫~濃いピンクの花色に網目模様が特徴です。
お花自体にかなりのインパクトがあるので、どこにつかうかによって活けたお花の焦点が決まってきます。
そして、葉物は谷渡りです。
いわゆる葉っぱの形とは全く異なる、細く長い独特の姿をしています。
長さと丈夫さをいかして、丸めたり折ったり重ねたりと、様々なアレンジを加えて楽しく活けることが出来る花材です。
葉物ですが、長さと直線的なラインも持っているので、枝物の様な役割も果たすことが出来ます。
花器選び
谷渡りをどのように使うのか、によってどの花器を選ぶかが変わってきます。
今回は、直線的に使おうと思うのでかきはこちらを選択しました。
以前、『とても秋らしい生け花』で使用した花器です。
花器自体は直径約18㎝、高さ約12㎝と、あまり大きな花器ではありませんが、大きく(高く)活ける事も出来る花器です。
ここに谷渡りで直線と曲線を作り活けていこうと思います。
お花を活ける
まず、谷渡り3本のうち、1番まっすぐなものはそのまま置いておきます。
次に、残った2本のうちの1本で曲線を作ります。
大きめの円を作り、ホッチキスで固定します。
最後に残った1本を緩やかに矯めていきます。
だいたい葉先が90度くらいの角度に来るようにカーブさせます。
ここからお花を『のぞかせる』というイメージで活けていきたいと思います。
まず最初に、一番こっそりとのぞかせたいスプレーストックを活けます。
今回のストックは、お花の形はほとんど見せずに、お花の色合いだけを感じさせるように活けます。
ストックや次に活けるバンダの枝部分が見えてほしくなかったのと、グリーンを強調するために、丸めた谷渡りの向きを少し変えました。
次に、一番インパクトのあるバンダを活けます。
1本の茎に複数のお花が付いている植物を活ける時は特に『向き』に注意します。
お花が1番綺麗に見える方向を見極めます。
最後に、バラもこっそりとのぞかせて完成です。
グリーン、パープル、オレンジの色の比重を調節しながらバランスよく仕上げます。
残ったお花
今回、使用しなかった花材があります。
サンゴミズキです。
5~6月ごろに白っぽい小花が咲き、秋に落葉した後、冬にかけて枝がサンゴの様な赤色に色づく落葉低木樹です。
私は切り花の状態でお花屋さんでしか見た事がないのですが、寒さに強く、夏の暑さにさえ注意をすれば、お庭でも比較的育てやすい植物だそうです。
緑の葉っぱ、白いお花、白い実と紅葉した葉、赤い枝、と季節ごとに違った表情を見せてくれるので、お庭の植木としても年間を通じて楽しめそうですね。
落葉後に赤く色づくので、お花屋さんでは冬場の赤い枝物として、クリスマスのアレンジメントに使う事が多い植物です。
サンゴミズキの枝は柔らかいので、じわじわと矯めて曲線を出したり、更に力を加え続けて丸い円形にまでカーブさる事も出来ます。
そのままの形を素直に活ける以外にも、枝を様々な形に変化をさせて構造物として活けることも出来る面白い花材です。
谷渡りと重ねるように曲線を作ることも出来たのですが、今回はンプルに仕上げる事にしました。
サンゴミズキ3本はまた違う所に活けることにしました。
まとめ
今回は、とってもインパクトのあるバンダをメインにし、バラやストックにはこっそりと顔を見せる程度の『ひっそりとした主張』で抑えてもらう事にしました。
お料理でもそうですが、高級食材ばかりを使用したとしても必ずしも美味しい料理が出来上がるとは限りません。
素材同士の主張がぶつかり合ってマイナス方向に働くこともありえます。
同様にお花も、あれもこれも目立たせたいと目一杯詰め込み過ぎたり、すべてのお花を前面に押し出し過ぎると、見た目が暑苦しく非常に圧迫感のあるお花になってしまいます。
普段は主役級のお花であっても、ひっそり脇役に回ってもらう事もあります。
しかしながら紫系のストックとバンダの中で、オレンジのバラは見えている量ではわずかですが、強い存在感を放っていることは間違いありません。